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あなたが私の元を去ってから、私にほんの少しの空白が纏わりつくようになった。
空白は私に特別何もしてこない。
けれど、空白は私をじっと見つめ続けている。

空白は、私に寄り添うことはない。
手の届かない距離から、歩く私を、本を読む私を、歯を磨く私を、見つめ続けている。

試しにあなたのことを思い浮かべてみたら、
空白は私に少し近づいたけれど、すぐに離れて、元通り私を見つめ続けた。

仕方がないので、空白に見つめられながら私は生きていた。
初めは嫌な感じがしたけれど、案外慣れてしまうもので、
あなたと離れる前の生活にすぐに戻った。

それからしばらくして、あなたが誰かと一緒になったという噂を聞いた。
恐らく、空白も聞いていた。
空白は私にうんと近づいてから、私の周りを物凄いスピードでぐるぐる回った。
私は回る空白を見ていたら目眩がして、思わず目を瞑って座り込んだ。

すると、涙が出た。
たくさんの涙が出た。
涙の後を追うように悲しみがやってきた。
私はあの別れから泣いてもいなければ悲しんでもいなかったことに、ようやく気がつく。
空白は私が泣くのをずっと窺っていたのだ。
空白はそれだけの為の存在だった。


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明日は、雨。
きっとみんな覚悟は出来ているのだろう。
明日を迎えるからといって、特別な準備は何もせず、かといって騒ぐこともなく、
いつものように、静かすぎず煩すぎないお喋りが、ボソボソと続いていた。

僕はといえば、覚悟なんて全く出来ていない。
せっかく綺麗な花を咲かせたのに、散ってしまうなんて悲しいじゃないか。
努力したのに、辛いじゃないか。

くよくよと下を向いていたら、隣の木がこれは自然の定めだから仕方がないと、
何千年も前から使い古された言葉をわざわざ投げ掛けてきたので、腹が立ってシカトした。
隣の木は大袈裟にため息をつき、だめだありゃと隣の隣の木につぶやく。
おかしいのは、自分がよく、わかっている。

雨で花が散るのは、既に数えきれないほど経験している。
でも、特にここ50年位はうんざりしていた。
「雨粒は花びらを削ぐナイフ」
そんな風に思ってしまうほど、僕はもうおかしくなっていたんだ。

翌日、予報通り雨が降った。
僕は必死で雨に対抗した。
一枚でもやられるものかと踏ん張った。
その甲斐あって、僕の花はほとんど守られた。

僕は雨が降る度に、対抗した。
そしてその戦いに負けることはなかった。

新緑と呼ばれる季節。
僕は、未だに満開の花を咲かせていた。
陽も長くなり、気温も上がって、光合成には気持ちのいい時期だ。
でも、僕には数えるほどの葉しかなかった。
光合成をまともに出来ない僕は、案の定枯れた。
でも、これで良かったのではないかと思う。

僕は桜の木だったけれど、変化するのが怖くなってしまった。
だから天気と時間に逆う真似をした。
それがおかしいのは自分でもわかっていた。
でも、僕は生きた。
おかしかったけれど、おかしいなりに、生きた。
それで充分だろう?そうは思わないか?


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