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私に媚びを売るために君は猫撫で声を出す。
ずいぶんと半端な猫撫で声だ。
そんな声しか出ないなら、要らない。
だから私は君を捨てた。初めて猫を捨てた。

捨てた日のことは今でも覚えている。
後悔はしていないはずなのに、あの顔がどうしても頭から離れなくて、
化け猫が襲ってくるかなと思ったりもして、ちっとも眠れなかった。

化け猫は現れなかったけれど、
街路樹の根元や、
誰もいない公園や、
落ち葉だらけのどぶ、
更には私の鞄のポケットや、
コーヒーカップの底に、
あの日捨てた猫の残像を見ることになった。

あの半端な猫撫で声に何を期待していたというのだろう?
ただの猫だ、しかも汚い猫なのに。
自分の心の空洞が怖かった。
その空洞を猫で埋めようとした自分の軽薄さは、もっと怖かった。

猫の残像にずっと苦しめばいいと思った。


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